
【法学部志望の受験生必見】法学・政治系の小論文で出題が予想される10のテーマ|例題・回答のポイント・根拠データ
法学部や政治経済学部などの法学・政治系学部では、推薦・総合型選抜を中心に、多くの大学が小論文を課しています。一般選抜でも、慶應義塾大学法学部の論述力試験や、国公立大学の後期日程などで小論文が出題されます。
法学・政治系の小論文には、はっきりした特徴があります。それは、「自由」「平等」「民主主義」といった憲法の基本的な考え方を使って、最近の法律や社会の出来事を評価させることです。たとえば「表現の自由」は何十年も出題されている定番ですが、SNSや選挙の偽情報が問題になると、「ネット上の表現をどこまで規制してよいか」という形で問われるようになります。
そこでこの記事では、過去の出題傾向と、2024年秋から2026年夏までの法改正やニュースを重ね合わせ、これからの入試で出題が予想される10のテーマを選びました。テーマごとに例題を示したうえで、「出る可能性がある理由」「回答のポイント」「前提知識と根拠として使えるデータ」を解説します。
各テーマの構成と無料添削のご案内
10のテーマは、出題の可能性が高いと考えられる順に並べています。全部を一度に覚える必要はありません。志望校の過去問を見て、近いテーマから読んでいくのがおすすめです。
それぞれのテーマは、次の順番で構成しています。
- 例題:そのテーマで出題が予想される問題(この記事のオリジナル問題です)
- 出る可能性がある理由:過去にどのように出題されてきたか、最近どんなニュースがあったか
- 回答のポイント:どう立場を決め、何を書けば評価されるか
- 前提知識:問題を理解するために知っておきたい用語や制度
- 根拠として使えるデータ:答案の根拠として使える数字や事実(出典つき)
まずは例題を読み、自分ならどう答えるかを少し考えてから、続きを読んでみてください。考えてから読むと、ポイントが頭に残りやすくなります。
なお、この記事で取り上げるテーマには、政治的に意見が分かれるものも含まれています。小論文では、どちらの立場をとるかで点数が決まることはありません。どちらの立場でも、理由と根拠が筋道立っていれば評価されます。 そのため記事では、賛成・反対の両方の論点を紹介しています。
答案の書き方そのものは、前回の記事「小論文の必勝法」で紹介した型(問いに答える一文目 → 理由の軸 → 根拠 → 反論と再反論 → 結論)がそのまま使えます。この記事では、その型に入れる「中身」を準備していきます。
【受験生必見】小論文の必勝法とは?採点者に伝わる「型」と書き方のコツを解説
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- ポイント
- 法学・政治系の小論文は「憲法の考え方 × 最近の法律やニュース」で出題されることが多い。自由・平等・民主主義という基本の軸に、最近の動きを一つ加えて書けると、答案に説得力が出る。
テーマ1 外国人との共生と移民政策
例題
日本で暮らす外国人は増え続けており、人手不足を補う役割が期待される一方で、生活ルールの違いなどから不安を感じる人もいる。今後、日本は外国人の受け入れにどのように向き合うべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
外国人の受け入れや多文化共生は、法学部・国際系学部で長く出題されている定番テーマです。「人権はだれに保障されるのか」「国家はだれを受け入れるかを自由に決めてよいのか」という、法学の基本的な問いにつながるからです。
最近では、2025年7月の参議院選挙で外国人政策が大きな争点になりました。政府は選挙期間中に「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置しています。在留外国人は2025年末に初めて400万人を超え、増加が続いています。社会の関心がこれほど高まっている今、出題の可能性は非常に高いと言えます。
回答のポイント
よく出る問いは「外国人労働者の受け入れを拡大すべきか」「多文化共生を実現するには何が必要か」「外国人の権利をどこまで保障すべきか」です。
- この問題の核心は、「人手不足の解消や社会の活力」と「治安や生活ルールへの不安、日本人との公平さ」をどう両立させるかです。
- 「受け入れるべきか、受け入れるべきでないか」の二択にしないことが大切です。すでに400万人以上が暮らしている現実をふまえ、どう受け入れ、どう共に暮らすか(日本語教育、ルールの周知、受け入れる側の体制)まで書くと、説得力が出ます。
- 外国人に対する差別的な表現は、どちらの立場をとる場合でも避けましょう。不安を論じるときも、「一部の問題」を「外国人全体」に広げない書き方が求められます。
前提知識
- 在留資格
- 外国人が日本に滞在し、活動するための法的な資格。「永住者」「留学」「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」など、活動内容ごとに分かれている。
- 特定技能
- 人手不足が深刻な介護、建設、外食などの分野で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れるための在留資格。2019年に始まった。
- 多文化共生
- 国籍や民族などの異なる人々が、互いの文化的な違いを認め合い、対等な関係を築きながら、地域社会の一員として共に生きていくこと。
- 日本国憲法が保障する人権は、権利の性質上、日本国民だけを対象とするものを除き、外国人にも保障されると考えられている(マクリーン事件の最高裁判決、1978年)。一方で、国が外国人の入国を認めるかどうかには、国の広い裁量があるとされる。
- 2023年の入管難民法改正で、難民認定の申請中は強制送還されないという原則に例外が設けられた(2024年6月施行)。
根拠として使えるデータ
- 2025年末の在留外国人は412万5,395人で、初めて400万人を超えた。日本の人口に占める割合は3.36%。国籍別では中国(約93万人)、ベトナム(約68万1千人)、韓国(約40万7千人)の順に多い。(出典:秋田魁新報「在留外国人、400万人超え」)
- 2026年6月末には428万1,026人となり、過去最多を更新した。人口に占める割合は3.4%。(出典:熊本日日新聞「在留外国人増、6月末428万人」)
- 2025年7月の参院選では「日本人ファースト」を掲げた政党が議席を伸ばし、外国人政策が大きな争点になった。当時の石破首相は「外国人との秩序ある共生社会推進室」を設置し、出入国在留管理の適正化、社会保険料の未納防止、土地取得の管理などを課題に挙げた。(出典:J-CAST ニュース(2025年7月24日))
テーマ2 選挙とSNS・偽情報
例題
選挙の際に、SNSで候補者に関する事実と異なる情報が広がることが問題になっている。選挙におけるSNS上の偽情報に、社会はどのように対応すべきか。表現の自由との関係にもふれながら、あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
「表現の自由」と「民主主義」は、法学部の小論文でもっとも重要な柱です。選挙とSNSの問題は、この2つが正面からぶつかるテーマです。
2024年11月の兵庫県知事選挙などをきっかけに、選挙でのSNSの影響が大きな議論になりました。そして2026年7月、SNS事業者に偽情報への対策を義務づけ、AIで作った画像・動画にはその旨の表示を求める法改正が成立しました。2027年春の統一地方選挙から適用される予定で、まさに「今」の問題です。
回答のポイント
よく出る問いは「SNS上の偽情報を法律で規制すべきか」「選挙にSNSが与える影響をどう考えるか」「有権者に求められる力とは」です。
- 論点の中心は、「選挙の公正さを守ること」と「表現の自由を守ること」のバランスです。
- 規制を強める立場では、「偽情報は有権者の判断をゆがめ、民主主義の土台を壊す」が軸になります。規制に慎重な立場では、「何が偽情報かを国が判断すると、政府に都合の悪い意見まで消されるおそれがある」が軸になります。
- 法律による規制だけでなく、事業者の自主的な対策と有権者一人ひとりのメディアリテラシーの3つを組み合わせて論じると、バランスのとれた答案になります。
前提知識
- 表現の自由
- 自分の考えや意見を、言葉・文章・絵などで外に表す自由。日本国憲法第21条が保障する。民主主義を支える特に重要な権利とされ、これを制限する法律は厳しく審査されるべきだと考えられている。
- 偽・誤情報
- 事実と異なる情報。わざとだます目的で流される「偽情報(ディスインフォメーション)」と、悪意なく誤って広がる「誤情報(ミスインフォメーション)」に分けられる。
- メディアリテラシー
- メディアから受け取る情報をうのみにせず、だれが・何の目的で発信したのかを考え、正しく読み解いて活用する力。
- 選挙のルールは「公職選挙法」で定められている。インターネットを使った選挙運動は、2013年から解禁された。
根拠として使えるデータ
- 2026年7月、選挙中のSNS利用について定めた改正公職選挙法・改正情報流通プラットフォーム対処法が成立した。SNS事業者は偽情報の被害を減らす「必要な措置」をとり、年1回その内容を公表する義務を負う(罰則はない)。利用者には、候補者についての偽情報を広めることの禁止や、AIで作成・加工した画像や動画にその旨を表示することが求められる。2027年3月1日施行。(出典:熊本日日新聞「選挙運動SNS対策法が成立」)
- 総務省の調査(2026年7月公表)では、過去に流通した偽・誤情報を見聞きした人のうち48.4%が「正しい情報だと思う」「おそらく正しい情報だと思う」と答えた。また、偽・誤情報に接した人の20.3%が何らかの手段でそれを拡散しており、年代別では10代が最も高かった。(出典:ECのミカタ「『偽・誤情報』接触した人、約2割が『何らかの手段』で拡散」)
テーマ3 冤罪と再審制度
例題
無実の人が有罪とされる「冤罪」は、なぜ起きるのか。また、冤罪を防ぎ、冤罪の被害者を救うために、刑事裁判の制度はどうあるべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
刑事裁判と人権は、法学部ならではの定番テーマです。国家が人を罰する力はとても強いため、「無実の人を罰しない仕組み」をどう作るかは、法学の根本的な問題です。
2024年9月、1966年に起きた事件で死刑が確定していた袴田巌さんに、やり直しの裁判(再審)で無罪判決が出ました。判決は、有罪の決め手とされた証拠を捜査機関による捏造と認定し、同年10月に無罪が確定しました。この事件をきっかけに再審制度の見直しが進み、2026年7月、刑事訴訟法の再審に関する規定が1948年の制定以来初めて改正されました。出題の可能性は非常に高いと言えます。
回答のポイント
よく出る問いは「冤罪はなぜ起きるか」「再審制度をどう改めるべきか」「捜査機関の権限と人権のバランス」です。
- 冤罪の原因は、「自白の偏重(取調べで自白を迫る)」「証拠の扱い(被告人に有利な証拠が開示されない、捏造される)」「一度出た判決を見直しにくい制度」の3つに整理できます。
- 「捜査機関を厳しく縛るべきだ」と書く場合は、「犯罪の真相を明らかにし、被害者や社会を守る」という捜査の役割も認めたうえで論じると、一方的な答案になりません。
- 再審の改正をめぐっては、検察官の不服申し立て(抗告)を「全面禁止」とすべきか「原則禁止」でよいかが争点になりました。「確定した判決の重み(法的安定性)」と「無実の人を早く救うこと」のどちらを重く見るかが、立場を決める軸になります。
前提知識
- 冤罪
- 罪を犯していない人が、犯人として疑われたり、有罪判決を受けたりすること。
- 再審
- 有罪判決が確定したあとで、無罪を示す新しい証拠が見つかった場合などに、裁判をやり直す制度。
- 推定無罪の原則
- 有罪判決が確定するまで、被疑者・被告人は罪を犯していない人として扱われなければならないという原則。「疑わしきは被告人の利益に」とも表される。
- 日本の裁判は、地方裁判所・高等裁判所・最高裁判所の三審制。判決が確定すると、原則として同じ事件を再び裁判することはできない。
根拠として使えるデータ
- 袴田巌さんは1966年の事件で死刑が確定していたが、2024年9月26日の再審判決で無罪となった。判決は有罪の決め手とされた証拠を捜査機関による捏造と認定した。身体拘束は48年間に及んだ。(出典:しんぶん赤旗(2024年9月28日))
- 2024年10月、検察が控訴を断念し、無罪が確定した。(出典:ABEMA TIMES)
- 2026年7月17日、再審制度を見直す改正刑事訴訟法が成立した。再審開始の決定に対する検察官の不服申し立てを原則として禁止し、裁判所が再審請求に関係する証拠の提出を命じられるようにした。再審規定の見直しは1948年の法制定以来初めて。野党の一部は不服申し立ての全面禁止を求めた。(出典:熊本日日新聞「再審制度、初の見直し」)
テーマ4 監視社会とプライバシー
例題
国の安全を守るために、政府が情報を集める仕組みが強化されつつある。安全の確保と個人のプライバシーの保護は、どのように両立させるべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
監視社会とプライバシーは、法学部で頻出のテーマです。岡山大学法学部などでも「監視社会」がよく出題されると言われています。防犯カメラ、スマートフォンの位置情報、ネットの閲覧履歴など、私たちの生活は大量のデータとして記録されるようになりました。
2026年5月には国家情報会議設置法が成立し、7月には政府の情報収集を担う「国家情報局」が発足しました。スパイ防止法の検討も本格化しています。同じ7月には、個人情報の保護と利用のルールを見直す改正個人情報保護法も成立しました。「安全」と「自由」のバランスが問われる重要な局面です。
回答のポイント
よく出る問いは「安全のために自由を制限してよいか」「監視カメラの増加をどう考えるか」「個人情報の利用と保護のバランス」です。
- この問題の核心は、「安全・便利さ」と「プライバシー・自由」のバランスです。どちらか一方だけを重視する答案は反論されやすくなります。
- 監視を認める立場でも、「だれが監視する側を監視するのか」という問いに答えることが大切です。第三者機関によるチェック、目的の限定、情報公開などの「歯止め」を具体的に書きましょう。
- 「悪いことをしていなければ監視されても困らない」という意見への反論として、「監視されていると感じるだけで、人は自由に発言や行動ができなくなる(萎縮効果)」という視点が使えます。
前提知識
- プライバシー権
- 私生活をみだりに公開されない権利。現在では、自分に関する情報を自分でコントロールする権利(自己情報コントロール権)として理解されることも多い。憲法第13条の幸福追求権から導かれると考えられている。
- 萎縮効果
- 規制や監視をおそれて、本来は自由にできるはずの発言や行動を、人々が自分から控えてしまうこと。
- 安全保障のために情報を集める活動は「インテリジェンス」と呼ばれる。多くの国が情報機関を持つ一方で、その活動を議会などがチェックする仕組みを設けている。
根拠として使えるデータ
- 2026年5月に国家情報会議設置法が成立し、政府は7月31日に「国家情報局」を設置した。首相を議長とする国家情報会議は、初の情報活動の指針(国家情報戦略)づくりや、スパイ防止法の検討を始める。国会の審議では、個人情報やプライバシーの保護、政治的中立性の確保について懸念が示された。(出典:熊本日日新聞「国家情報局、31日設置決定」)
- 2026年7月10日に改正個人情報保護法が成立した。データの適正な利活用を進める措置とともに、ルールの実効性を確保するための課徴金制度が盛り込まれた。(出典:北海道新聞)
テーマ5 選択的夫婦別姓と家族のあり方
例題
現在の日本の法律では、結婚した夫婦は同じ姓(名字)を名乗らなければならない。夫婦がそれぞれ結婚前の姓を名乗ることも選べる「選択的夫婦別姓」を導入すべきか。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
家族のあり方と法律は、法学部の定番テーマです。夫婦の姓の問題は、「個人の尊重」「男女の平等」「家族の一体感」など、さまざまな価値がぶつかるため、小論文に向いています。
2025年には、選択的夫婦別姓を導入する法案が約28年ぶりに国会で審議されましたが、採決には至りませんでした。その後、自民党と日本維新の会は、夫婦同姓を維持したまま旧姓を通称として使えるようにする「旧姓の通称使用の法制化」で合意しています。制度の方向性が大きく揺れているテーマです。
回答のポイント
よく出る問いは「選択的夫婦別姓を導入すべきか」「旧姓の通称使用で十分か」「家族の形はどうあるべきか」です。
- 導入に賛成する立場の軸は「個人の尊重と男女の平等」です。実際には約94%の夫婦が夫の姓を選んでおり、姓を変える負担が女性にかたよっていることが根拠になります。
- 導入に慎重な立場の軸は「家族の一体感や子どもへの影響」です。「親子で姓が違うと子どもが困るのではないか」という論点があります。
- 「選択的」という言葉が大切です。別姓を望まない人には同姓を選ぶ道が残るため、「選ぶ自由を認めることで、だれが困るのか」を考えると、論点がはっきりします。旧姓の通称使用と比べて、何が解決し、何が残るのかを書けると深い答案になります。
前提知識
- 夫婦同氏制度
- 結婚する際に、夫または妻のどちらかの姓(氏)を夫婦の姓として選ぶ制度。民法第750条に定められている。法律上はどちらの姓を選んでもよい。
- 旧姓の通称使用
- 戸籍上の姓は変えたうえで、仕事などの場面で結婚前の姓を通称として使うこと。住民票やマイナンバーカードへの旧姓の併記などが進められている。
- 最高裁判所は2015年と2021年に、夫婦同姓を定める民法の規定は憲法に違反しないと判断した。そのうえで、制度のあり方は国会で議論し判断すべきだとした。
根拠として使えるデータ
- 2024年に結婚した夫婦のうち、夫の姓を選んだ夫婦は94.1%(45万6,453組)、妻の姓を選んだ夫婦は5.9%だった。(出典:内閣府男女共同参画局「夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ」)
- 内閣府の世論調査(2024年9月実施)では、結婚して戸籍上の姓が変わった場合に、働くときに旧姓を通称として使用したいと思う人は43.3%、思わない人は55.2%だった。(出典:同上)
- 自民党と日本維新の会は、夫婦同姓を維持したまま旧姓を通称として使えるようにする「旧姓の通称使用の法制化」で合意した。これにより、選択的夫婦別姓の導入法案の審議への影響は避けられないとみられている。(出典:秋田魁新報「夫婦別姓『実現の動き止まった』」)
テーマ6 AIと法
例題
生成AIが急速に広がり、偽の画像や動画が作られたり、他人の作品が無断で学習に使われたりする問題が起きている。AIの開発や利用を法律で規制すべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
AIは、ここ数年で出題が急に増えたテーマです。法学部では、「新しい技術に法律がどう追いつくか」という形で問われます。
2025年5月、日本で初めてAIに特化した法律(AI推進法)が成立しました。この法律は、罰則で縛るのではなく、開発と活用を推進しながらリスクに対応するという考え方をとっています。一方、ヨーロッパ(EU)は罰則つきの厳しい規制をつくりました。「規制か、推進か」という対立がはっきりしているため、小論文に向いたテーマです。
回答のポイント
よく出る問いは「AIを法律で規制すべきか」「AIが起こした損害の責任はだれが負うか」「AIと著作権」です。
- 論点の中心は、「技術の発展(イノベーション)」と「人権や安全の保護」のバランスです。
- 規制に慎重な立場では、「厳しい規制は技術の発展を止め、国際競争で遅れをとる」が軸になります。規制を求める立場では、「ディープフェイクやプライバシーの侵害など、被害が起きてからでは遅い」が軸になります。
- 「すべてのAIを同じように規制する」のではなく、リスクの大きさに応じて規制の強さを変えるという考え方を示すと、バランスのとれた答案になります。
前提知識
- ディープフェイク
- AIを使って、実在する人物の顔や声を本物そっくりに合成した偽の画像・動画・音声。偽情報や詐欺、名誉を傷つける目的で悪用されることがある。
- ソフトロー
- 罰則のある法律(ハードロー)ではなく、ガイドラインや業界の自主ルールなど、法的な強制力のない規範によって社会を方向づける方法。
- 日本の著作権法第30条の4は、AIの学習のように、作品を楽しむことを目的としない利用であれば、原則として著作権者の許可なく作品を使えると定めている。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合は例外とされる。
- EUは2024年に「AI法」を制定し、AIをリスクの大きさで分類して、高リスクのAIに厳しい義務と罰則を課した。
根拠として使えるデータ
- 2025年5月28日、AI推進法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)が成立した。日本で初めてのAIに特化した法律で、首相を本部長とするAI戦略本部を設置し、AI基本計画をつくる。違反に対する罰則はなく、生成AIの悪用やディープフェイクなどのリスクについて、国が事業者を調査・指導し、深刻な場合は事業者名を公表できる。(出典:innovatopia「日本初のAIに特化した法案『AI推進法』が成立」)
- 2026年7月に成立した改正公職選挙法では、AIで作成・加工した画像や動画を投稿する人に、その旨を表示することが求められるようになった。(出典:熊本日日新聞「選挙運動SNS対策法が成立」)
テーマ7 若者の政治参加と投票率
例題
若い世代の投票率は、ほかの世代に比べて低い傾向が続いている。若者の投票率が低いことは、なぜ問題なのか。また、若者の政治参加を進めるためにどのような取り組みが必要か。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
選挙権が18歳以上に引き下げられた2016年以降、若者の政治参加は法学・政治系学部の定番テーマになりました。受験生自身が当事者であるため、「あなたはどう考えるか」を問いやすいテーマでもあります。
2025年7月の参院選、2026年2月の衆院選と、国政選挙が続きました。SNSを使った選挙運動が広がり、若者の投票行動にも変化が見られます。総務省の調査では、20歳代の投票率は全体よりかなり低い状態が続いています。
回答のポイント
よく出る問いは「若者の投票率が低いのはなぜか」「若者の投票率を上げるには」「選挙以外の政治参加のあり方」です。
- 「若者の投票率が低いと何が問題か」を必ず説明しましょう。投票する人の多い世代の意見が政策に反映されやすくなり、若い世代の将来に関わる問題(年金、教育、気候変動など)が後回しにされるおそれがあることが軸になります(シルバー民主主義)。
- 原因は、「政治への関心や知識の不足」「自分の一票では変わらないという無力感」「引っ越しで住民票を移していないなどの手続きの壁」などに整理できます。原因に対応した対策を書くと、論理が一貫します。
- 主権者教育、ネット投票の検討、投票所を身近にする工夫など、具体的な提案を一つ以上入れましょう。
前提知識
- 主権者教育
- 社会の課題を自分のこととして考え、話し合い、判断し、行動する力を育てる教育。18歳選挙権の導入とともに、高校で本格的に行われるようになった。
- シルバー民主主義
- 高齢者の人口が多く、投票率も高いため、高齢者向けの政策が優先されやすくなる状態を指す言葉。
- 2016年から、選挙権を持つ年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられた。2022年には成年年齢も18歳に引き下げられた。
根拠として使えるデータ
- 2026年2月の衆院選の投票率は全体で56.26%だったのに対し、10歳代は43.45%、20歳代は39.01%だった。2025年7月の参院選では、全体58.51%に対し、10歳代45.29%、20歳代47.30%だった。(出典:総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」)
- 総務省の調査(2026年7月公表)では、偽・誤情報に接した人のうち何らかの手段で拡散した人の割合は、10代が最も高かった。若者がSNSで政治の情報に触れる機会が増える中、情報を見極める力も問われている。(出典:ECのミカタ)
テーマ8 ネットの誹謗中傷と表現の自由
例題
インターネット上で、特定の個人に対するひどい悪口や事実でない書き込みが広がり、深刻な被害が生まれている。誹謗中傷を防ぐために、SNS上の投稿をどこまで規制すべきか。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
ネット上の誹謗中傷は、「表現の自由」と「人格権・名誉」という2つの権利がぶつかる、法学部らしいテーマです。
2025年4月、大規模なSNS事業者に、削除の申し出への迅速な対応などを義務づける「情報流通プラットフォーム対処法」が施行されました。2026年には、この法律にもとづいて事業者が初めて対応実績を公表し、削除の判断の難しさも明らかになっています。テーマ2の「選挙と偽情報」ともつながる、出題の可能性が高いテーマです。
回答のポイント
よく出る問いは「誹謗中傷を法律で規制すべきか」「SNS事業者はどこまで責任を負うべきか」「匿名での発信をどう考えるか」です。
- 論点の中心は、「被害者の名誉や人格を守ること」と「表現の自由を守ること」のバランスです。
- 「ひどい書き込みは全部消すべき」と書くと、「正当な批判まで消されるのでは」と反論されます。「批判」と「誹謗中傷」の違いを自分の言葉で定義してから論じると、論理がしっかりします。
- 対策は、「法律(加害者の特定・処罰)」「事業者(削除・通報の仕組み)」「利用者(発信する前に考える力)」の3つの段階で整理すると書きやすくなります。
前提知識
- 誹謗中傷
- 根拠のない悪口を言いふらしたり、人の名誉を傷つけたりすること。法律用語ではないが、内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪にあたることがある。
- 発信者情報開示請求
- インターネット上で権利を侵害された人が、SNS事業者などに対して、書き込んだ人の氏名や住所などの情報を開示するよう求める手続き。
- 2022年に刑法が改正され、侮辱罪の法定刑が引き上げられた(懲役・禁錮刑を追加)。
- 表現の自由は無制限ではなく、他人の名誉やプライバシーを侵害する表現は、法律で制限されうる。
根拠として使えるデータ
- 総務省が運営する違法・有害情報相談センターには、2024年度にインターネット上の違法・有害情報に関する相談が6,403件寄せられた。(出典:警察庁「令和7年版 犯罪被害者白書」)
- LINEヤフーが情報流通プラットフォーム対処法にもとづいて公表した2025年度の報告では、削除の大半は通報ではなく自社の監視による探知がきっかけだった(削除に占める割合は56〜95%)。権利侵害を訴える削除の申し出には7日以内に対応方針を通知する必要があるが、期限内に判断できないケースが目立ち、表現の自由との兼ね合いで判断が難しい面があることが示された。(出典:秋田魁新報「投稿削除、大半が自社で探知」)
テーマ9 「1票の格差」と平等
例題
選挙区によって、議員1人あたりの有権者の数に差がある「1票の格差」が問題とされている。この格差はなぜ問題なのか。また、人口の少ない地方の声を政治に届けることとの関係をふまえて、選挙制度はどうあるべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
「1票の格差」は、「法の下の平等」と「民主主義」が交わる、法学部の定番テーマです。国政選挙のたびに裁判が起こされ、最高裁の判断が注目されます。
2026年2月の衆院選では、1票の格差は最大2.10倍となり、全国で16件の訴訟が起こされました。2026年5月以降、各地の高裁が判決を出しています。また、衆議院の議員定数を削減する法案も議論されており、「選挙制度はどうあるべきか」が改めて問われています。
回答のポイント
よく出る問いは「1票の格差はどこまで許されるか」「地方の代表をどう確保するか」「選挙制度の改革」です。
- 格差の是正を重視する立場の軸は「一人一票の平等」です。住む場所によって1票の重さが違うのは、法の下の平等に反するという考え方です。
- 一方、格差をある程度許す立場の軸は「地域の声の反映」です。人口だけで議席を配分すると、人口の少ない地方の議員がさらに減り、地方の問題が政治に届きにくくなるという論点があります。
- 両方の軸を示したうえで、「人口比例を基本にしつつ、地方の声は別の方法(参議院の役割、地方自治の強化など)で届ける」のように、両立の道を提案すると深い答案になります。
前提知識
- 1票の格差
- 選挙区ごとの「議員1人あたりの有権者数」の差。たとえば格差が2倍なら、有権者の多い選挙区の1票は、少ない選挙区の1票の半分の重さしかないことになる。
- アダムズ方式
- 都道府県の人口を一定の数で割り、小数点以下を切り上げて議席数を決める計算方法。人口比をより正確に反映しやすいとされ、2024年の衆院選から小選挙区の議席配分に導入された。
- 最高裁判所は、格差が大きすぎる場合に「違憲状態」と判断してきた。ただし、選挙そのものを無効にした例はない。
根拠として使えるデータ
- 2024年10月の衆院選(1票の格差は最大2.06倍)について、最高裁は2025年9月に合憲と判断した。アダムズ方式による新しい議席配分について、「格差を相当程度縮小させており、合理性がある」とした。(出典:秋田魁新報「昨年の衆院選、1票の格差は合憲」)
- 2026年2月の衆院選では1票の格差が最大2.10倍となり、全国14の高裁・支部に16件の訴訟が起こされた。2026年5月20日時点で、それまでに出た3件の判決はいずれも合憲だった。(出典:熊本日日新聞「2月衆院選『合憲』3件目」)
- 衆議院の議員定数削減をめぐっては、与党が比例代表の議席を45削減する法案を提出した。少数政党に不利になるとの批判も出ている。(出典:神戸新聞 社説(2026年6月))
テーマ10 カスタマーハラスメントと規制
例題
客が店員などに対して理不尽な要求や暴言を繰り返す「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題になっている。カスハラを防ぐために、法律や条例で規制することについて、あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
カスハラは、新しく注目されるようになった社会問題です。「働く人の人権」と「客の権利(正当な苦情を言う自由)」のバランスを問える点で、法学部の小論文に向いています。
2025年4月、東京都で全国初のカスハラ防止条例が施行されました。さらに2025年6月には改正労働施策総合推進法が公布され、企業にカスハラ対策を義務づける規定が、2026年10月から施行されています。まさに今、ルールが動き出したところであり、出題の可能性があります。
回答のポイント
よく出る問いは「カスハラを法律で規制すべきか」「正当なクレームとカスハラの境界はどこか」「働く人を守るために社会は何をすべきか」です。
- 論点の中心は、「働く人の心身の安全」と「客が正当な苦情を伝える自由」のバランスです。
- 規制に賛成する立場でも、「正当なクレームまで言えなくなる」という反論への答えを用意しましょう。「要求の内容が妥当か」「言い方(手段・態様)が社会的に許される範囲か」という2つの基準で区別する、という考え方が使えます。
- 規制だけでなく、「お客様は神様」という考え方を見直す社会全体の意識の変化や、企業が従業員を守る体制づくりにも触れると、厚みのある答案になります。
前提知識
- カスタマーハラスメント(カスハラ)
- 顧客や取引先などが、社会通念上許される範囲を超えた言動(暴言、脅し、土下座の要求、長時間の拘束など)によって、働く人の就業環境を害すること。
- 正当な苦情(クレーム)は、商品やサービスを改善するきっかけにもなる。カスハラ対策では、正当なクレームまで封じないよう、線引きをどうするかが課題になる。
根拠として使えるデータ
- 改正労働施策総合推進法は2025年6月11日に公布され、企業(事業主)にカスタマーハラスメントの防止措置を義務づけた。施行は原則として2026年10月1日。(出典:契約ウォッチ「労働施策総合推進法改正(2026年)」)
テーマどうしのつながりを意識しよう
10のテーマを並べてみると、多くのテーマが同じ考え方の軸でつながっていることに気づきます。
- 自由と規制のバランス:テーマ2(選挙とSNS)、テーマ4(監視社会)、テーマ6(AIと法)、テーマ8(誹謗中傷)、テーマ10(カスハラ)
- 平等と個人の尊重:テーマ1(外国人との共生)、テーマ5(夫婦別姓)、テーマ9(1票の格差)
- 民主主義と国家の力の歯止め:テーマ3(冤罪と再審)、テーマ7(若者の政治参加)、テーマ9(1票の格差)
本番では、知らないテーマが出ることもあります。そんなときは、「だれのどんな自由が制限されるのか」「その制限は何を守るためか」「制限しすぎないための歯止めはあるか」という3つの問いを当てはめてみてください。法学・政治系の小論文の多くは、この問いで整理できます。
- ポイント
- 法学・政治系の小論文で大切なのは「何を守るために、何をどこまで制限するか」を考えること。自由・平等・民主主義という3つの軸を持っておけば、初めて見るテーマにも対応できる。
ロジクイズで小論文の土台となる論理力を鍛えよう
テーマの知識がそろっても、それを「意見と根拠」として正しくつなげられなければ、小論文の点数にはつながりません。
そこでおすすめしたいのが、論理的思考力を鍛えるためのクイズアプリ 「ロジクイズ」 です。
ロジクイズでは、短い問題を解きながら「この主張の根拠は何か」「この条件から何が言えて、何が言えないか」を考える練習ができます。法学・政治系の小論文でよく出る「2つの権利がぶつかる問題」を整理するときにも、この力が役立ちます。
- 1問ずつ短く解けるので、テーマの勉強の合間にも続けられる
- 根拠と主張のつながりを見抜く練習が、答案の論理チェックに役立つ
- 正解・不正解がすぐわかり、自分の考え方のクセに気づける
テーマの知識を集めたら、それを論理でつなぐ練習を。まずは1問、気軽に解いてみてください。
