
【医療系志望の受験生必見】医学部・看護系の小論文で出題が予想される10のテーマ|例題・回答のポイント・根拠データ
医学部や看護学部、薬学部などの医療系学部では、多くの大学が小論文を課しています。推薦や総合型選抜だけでなく、一般選抜で小論文が出る大学も少なくありません。
医療系の小論文には、はっきりした特徴があります。それは、昔から繰り返し出ている定番のテーマが、その年のニュースと組み合わされて出題されることです。たとえば「安楽死」は何十年も出題されている定番ですが、海外で法案が話題になった年には、その動きを踏まえた問いが出やすくなります。
そこでこの記事では、過去の出題傾向と、2024年秋から2026年夏までの医療ニュースを重ね合わせ、これからの入試で出題が予想される10のテーマを選びました。テーマごとに例題を示したうえで、「出る可能性がある理由」「回答のポイント」「前提知識と根拠として使えるデータ」を解説します。
各テーマの構成と無料添削のご案内
10のテーマは、出題の可能性が高いと考えられる順に並べています。全部を一度に覚える必要はありません。志望校の過去問を見て、近いテーマから読んでいくのがおすすめです。
それぞれのテーマは、次の順番で構成しています。
- 例題:そのテーマで出題が予想される問題(この記事のオリジナル問題です)
- 出る可能性がある理由:過去にどのように出題されてきたか、最近どんなニュースがあったか
- 回答のポイント:どう立場を決め、何を書けば評価されるか
- 前提知識:問題を理解するために知っておきたい用語や制度
- 根拠として使えるデータ:答案の根拠として使える数字や事実(出典つき)
まずは例題を読み、自分ならどう答えるかを少し考えてから、続きを読んでみてください。考えてから読むと、ポイントが頭に残りやすくなります。
答案の書き方そのものは、前回の記事「小論文の必勝法」で紹介した型(問いに答える一文目 → 理由の軸 → 根拠 → 反論と再反論 → 結論)がそのまま使えます。この記事では、その型に入れる「中身」を準備していきます。
【受験生必見】小論文の必勝法とは?採点者に伝わる「型」と書き方のコツを解説
例題の答案を無料で添削します
例題を使って答案を書いたら、お問い合わせから「例題(課題)」と「あなたの答案」を送ってください。無料で添削してお返しします。 書いた答案を人に読んでもらうことは、小論文の力を伸ばすいちばんの近道です。気軽に送ってみてください。
- ポイント
- 医療系の小論文は「定番テーマ × 最近のニュース」で出題されることが多い。定番の知識に、最近の動きを一つ加えて書けると、答案に説得力が出る。
テーマ1 安楽死・尊厳死と人生の最終段階の医療
例題
人生の最終段階において、本人が延命治療を望まない場合、医療者はその意思をどこまで尊重すべきか。安楽死をめぐる海外の動きにも触れながら、あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
安楽死や延命治療は、医療系小論文でもっとも古くから出題されている定番テーマです。「命を延ばすこと」と「本人の意思を尊重すること」がぶつかる、医療者なら必ず向き合う問題だからです。
最近では、イギリスの動きが大きく報道されました。2025年6月、イギリス下院(イングランドとウェールズ)は、余命6か月以内の成人に医師の助けを借りて自ら命を絶つ権利を認める法案を可決しました。この法案は上院での審議が長引いて2026年4月に廃案となり、スコットランド議会でも2026年3月に同様の法案が否決されています。先進国の議会で賛否が大きく割れたことで、「日本ではどう考えるか」を問う出題が予想されます。
回答のポイント
よく出る問いは「安楽死を認めるべきか」「延命治療をどう考えるか」「患者の意思をどう尊重するか」です。
- 立場は「賛成か反対か」の二択にしなくてよい。「現時点では認めるべきではない。まず緩和ケアと意思決定の支援を充実させるべきだ」のように、条件をつけた立場が書きやすく、説得力も出やすい。
- 賛成側の軸は「自己決定権(自分の人生の終わり方を自分で決める権利)」、反対側の軸は「弱い立場の人への圧力(家族の負担や医療費を気にして、本当は望まない死を選ばされるおそれ)」です。どちらの軸で書くかを先に決めましょう。
- 反論への再反論では、「苦痛を取り除く緩和ケアが十分に行き渡っているか」という視点が使えます。イギリスの反対派も、まず緩和ケアの整備を優先すべきだと主張していました。
- 医療者を目指す受験生として、「患者や家族と繰り返し話し合い、意思を確認する」姿勢を結論に入れると、医療系らしい答案になります。
前提知識
- 安楽死
- 苦痛から解放するために、医師などが患者の死を早める行為。薬物を投与するなど直接命を絶つ「積極的安楽死」と、治療を中止・差し控えて死を受け入れる「消極的安楽死」に分けて考えることが多い。日本では積極的安楽死は法律で認められていない。
- 尊厳死
- 回復の見込みがない患者が、本人の意思にもとづいて延命治療を受けず、自然な死を迎えること。積極的安楽死とは区別される。
- ACP(アドバンス・ケア・プランニング)
- 将来受けたい医療やケアについて、本人が家族や医療者と前もって繰り返し話し合い、共有しておく取り組み。日本では「人生会議」という愛称で広められている。
- オランダは2002年に安楽死を合法化した。ベルギー、カナダ、アメリカの一部の州などでも条件つきで認められている。
- 日本では、1995年の東海大学安楽死事件の判決で、積極的安楽死が許されるための4つの条件(耐えがたい肉体的苦痛、死が避けられず迫っている、苦痛を取り除く他の手段がない、本人の明確な意思表示)が示された。
根拠として使えるデータ
- イギリス下院は2025年6月、余命6か月以内と診断された18歳以上の患者に、医師の助けを受けて自ら命を絶つ権利を認める法案を可決した。しかし上院の審議が長引いて2026年4月に廃案となり、再提出された法案は2026年9月に下院で否決された(賛成270票、反対286票)。(出典:熊本日日新聞「英『安楽死』法案が否決」)
- ACP(人生会議)を「よく知っている」と答えた一般の人は5.9%にとどまる。人生の最終段階の医療について家族などと「話し合ったことがある」人は29.9%で、前回調査(39.5%)より減った。(出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」令和4年度)
- 一方で、自分の希望をあらかじめ書面にしておく「事前指示書」の作成に賛成する人は69.8%にのぼる。(出典:同上)
テーマ2 高齢化と医療費・国民皆保険の持続性
例題
高齢化によって医療費が増え続けている。国民皆保険制度を将来も維持するために、患者の負担はどうあるべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
高齢化と医療制度は、医学部・看護系の両方で出題が続いているテーマです。2024年度の東京医科歯科大学(現・東京科学大学)では、高齢化に伴って必要となる医療改革について、課題文を読んで論じる問題が出ています。
そして2025〜2026年は、医療費の負担をめぐる大きな制度変更が続きました。
- 高額療養費制度の自己負担の上限が、2026年8月と2027年8月の2段階で引き上げられることになった(あわせて年間の上限も新設)。
- 2026年5月、市販薬と成分や効き目が似ている処方薬(OTC類似薬)について、薬剤費の25%を患者が追加で負担する仕組みを盛り込んだ法律が成立した。2027年3月の開始が目指されている。
「医療費をだれがどれだけ負担すべきか」は、受験生の世代が将来ずっと関わる問題です。出題の可能性は非常に高いと言えます。
回答のポイント
よく出る問いは「増え続ける医療費にどう対応すべきか」「高齢者と現役世代の負担のバランス」「国民皆保険を維持するには」です。
- この問題の核心は「だれもが必要な医療を受けられること」と「制度を将来も続けられること」の両立です。どちらを優先するかが、理由の軸になります。
- 「負担を増やすべきか、増やすべきでないか」だけで書くと、どちらの立場でも反論されやすくなります。「負担増はやむを得ないが、所得の低い人や重い病気の人には配慮すべきだ」のように、だれの負担を、どう増やすかまで踏み込みましょう。
- 「病気にならないようにする(予防)」「軽い症状は市販薬で対処する(セルフメディケーション)」など、医療費そのものを減らす方法を提案すると、答案に厚みが出ます。
前提知識
- 国民皆保険
- すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する仕組み。日本では1961年に実現した。病院の窓口では原則1〜3割を払えば医療を受けられる。
- 高額療養費制度
- 1か月の医療費の自己負担が上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度。所得に応じて上限が決まっている。重い病気の人を守る「最後の支え」とも言われる。
- セルフメディケーション
- 自分の健康に責任を持ち、軽い体の不調は市販薬などで自分で手当てすること。医療費を抑える方法の一つとして国が推進している。
- 病院の窓口で払う割合は、原則として小学校入学後〜69歳が3割、70〜74歳が2割、75歳以上が1割(所得が多い人は2割または3割)。
- 団塊の世代がすべて75歳以上となった2025年は「2025年問題」と呼ばれ、医療と介護の需要がさらに高まると言われてきた。
根拠として使えるデータ
- 2023年度の国民医療費は48兆915億円で、過去最高を更新した。(出典:厚生労働省「令和5(2023)年度 国民医療費の概況」)
- そのうち65歳以上の人の医療費は28兆8,806億円で、全体の60.1%を占める。1人あたりでは、65歳未満が21万8,000円、65歳以上が79万7,200円で、約3.7倍の差がある。(出典:同「結果の概要」)
- 高額療養費制度の自己負担の上限は、2026年8月と2027年8月の2段階で引き上げられる。たとえば年収約370万〜770万円の人は、月の上限が「8万100円+α」から「8万5,800円+α」になる。あわせて年間の上限(同じ所得層で53万円)が新しく設けられる。(出典:日本医事新報社)
- 2026年5月、市販薬と似た処方薬(OTC類似薬)について、薬剤費の25%を患者が追加で負担する仕組みを含む法律が成立した。対象は約77成分・約1,100品目が想定され、2027年3月の開始が目指されている。政府は医療費が約900億円減ると試算している。(出典:熊本日日新聞「医療制度改革法案が可決、成立へ」)
テーマ3 AIと医療
例題
AIが医療の現場で使われるようになったとき、医師(または看護師)に求められる役割はどのように変わるか。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
AIは、ここ数年で出題が急に増えたテーマです。2026年6月に改訂された看護医療系小論文の頻出テーマ本でも「AIと医療・介護」が取り上げられています。
医療の現場では、画像からがんなどを見つける診断支援AIに加え、生成AIを使って退院時の書類(退院サマリー)の下書きを作るといった取り組みも始まっています。2026年6月には、医療機関の情報システムの安全管理に関する国のガイドラインも改訂されました。AIが急速に広がる一方で、「AIが間違えたらだれが責任を取るのか」「医師や看護師の仕事はどう変わるのか」という問いは、まさに小論文向きです。
回答のポイント
よく出る問いは「AIは医師に取って代わるか」「AIを医療に使うときの課題」「AI時代に医療者に求められる力」です。
- 「AIは便利だから使うべき」だけでは不十分です。AIが得意なこと(大量のデータから素早くパターンを見つける)と、人間にしかできないこと(患者の思いを聞き、説明し、最終的に判断して責任を負う)を分けて書くと、論理が整理されます。
- 立場としては「AIは医療者を置き換えるのではなく、支える道具として使うべきだ」が書きやすい定番です。ただし定番だからこそ、「書類作成をAIに任せて生まれた時間を、患者との対話に使う」のように具体的な場面を入れて差をつけましょう。
- 課題としては、責任の所在、個人情報の保護、AIの判断の偏り(学習データの偏り)の3つを押さえておけば十分です。
前提知識
- 生成AI
- 文章・画像などを、学習したデータをもとに新しく作り出すAI。医療では、カルテの要約や書類の下書き、患者への説明文の作成などへの活用が試みられている。もっともらしい誤りを出すことがある点に注意が必要。
- アルゴリズムのバイアス
- AIが学習したデータに偏りがあるために、特定の性別・人種・年齢の人に対して判断の精度が下がったり、不公平な結果が出たりすること。
- 医師の働き方改革(テーマ4)で労働時間を減らす必要があり、書類作成などの負担を減らす手段としてもAIが期待されている。
根拠として使えるデータ
- 厚生労働省は2018年12月の通知で、AIを使った診断・治療支援を行う場合も、診断や治療の主体は医師であり、最終的な判断の責任は医師が負うという考え方を示した。(出典:厚生労働省医政局医事課長通知(2018年12月19日))
- 国立病院機構名古屋医療センターでは、生成AIを使って退院サマリー(退院時の診療のまとめ)の作成を支援する取り組みが導入されている。また2026年6月には、医療機関の情報システムの安全管理に関する国のガイドラインが第7.0版に改訂された。(出典:AFPBB(プレスリリース、2026年7月))
テーマ4 医師の偏在と地域医療
例題
医師が都市部に集まり、地方で不足している。この問題を解決するために、医師が働く場所を国や都道府県が規制することは認められるか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
「医師が都市部に集まり、地方で足りない」という問題は、地域枠の入試が広がるなかで、特に地方の国公立大学医学部で出題が続いているテーマです。面接でも「地域医療についてどう考えるか」は定番の質問です。
2025年12月には、医師の偏在を正すための改正医療法が成立しました。医師が多い都市部で新たに開業しようとする医師に対し、都道府県が救急や在宅医療など地域で足りない役割を担うよう要請できるようになり、従わない場合は勧告や公表も検討されています。逆に、医師が足りない地域で働く医師には手当を増やします。国が「開業の自由」に一歩踏み込んだ大きな変化であり、出題が予想されます。
回答のポイント
よく出る問いは「地方の医師不足をどう解決するか」「医師の偏在を正すために規制は必要か」「地域医療に貢献するとはどういうことか」です。
- 論点の中心は、「医師がどこで働くかを選ぶ自由」と「どこに住んでいても医療を受けられる公平さ」のバランスです。
- 「規制で医師を地方に送ればよい」だけでは、医師のやる気や生活への配慮が欠けると反論されます。規制(強制)と支援(手当・キャリアの保証・オンライン診療)を組み合わせるという書き方が説得力を持ちます。
- 地域枠で受験する人は、「なぜ地方で働きたいのか」を自分の経験とつなげて書けるよう準備しておきましょう。
前提知識
- 医師の偏在
- 医師の数が地域や診療科によってかたよっていること。都市部と地方の差(地域偏在)に加え、外科や産科、救急などで医師が足りない「診療科偏在」も問題になっている。
- 地域枠
- 卒業後、一定期間(多くは9年程度)その都道府県の指定された地域や医療機関で働くことを条件に入学する、医学部の入試の枠。奨学金が貸与されることが多い。
- 2024年4月から、医師の時間外労働に上限が設けられた(医師の働き方改革)。地方の病院では、医師の労働時間を減らしながら医療を守るという難しい課題を抱えている。
根拠として使えるデータ
- 2024年末時点の医師数は34万7,772人。病院や診療所で働く医師は、人口10万人あたり全国平均267.4人だが、最も多い徳島県(345.4人)と最も少ない埼玉県(189.1人)では約1.8倍の差がある。(出典:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」)
- 2025年12月に成立した改正医療法では、医師が多い地域で開業する医師に対し、都道府県が救急や在宅医療など不足する機能を担うよう要請できるようにした。従わない場合は勧告や公表も検討される。医師が不足する地域で働く医師の手当も増額する。(出典:秋田魁新報「医師の偏在是正、開業抑制へ」)
テーマ5 臓器移植
例題
日本では、臓器移植を希望しながら移植を受けられない人が多い。臓器提供を増やすためにどのような取り組みが必要か。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
臓器移植は、「脳死は人の死か」という生命観に関わる定番テーマです。
最近は、日本の臓器移植の仕組みの弱さが注目されました。2024年9月、厚生労働省は、臓器提供の申し出があったのに、移植する側の病院の人手不足や集中治療室の空きがないことを理由に、前年に延べ509人が移植を受けられなかったと初めて公表しました。また海外では、遺伝子を改変したブタの腎臓を人に移植し、2025年に271日間機能したと報告されるなど、「異種移植」の研究も進んでいます。
回答のポイント
よく出る問いは「日本で臓器提供が少ない理由と対策」「脳死を人の死と考えるか」「臓器提供の意思表示をどう広げるか」です。
- 「臓器提供を増やすべきだ」という立場をとる場合でも、提供は本人や家族の自由な意思にもとづくべきだという前提を必ず押さえましょう。強制や圧力は許されません。
- 提供が少ない理由は、「死生観や遺体へのこだわり」「意思表示をしている人が少ない」「受け入れる病院の体制が足りない」の3つに整理できます。最近のニュースを使えば、3つ目の「体制」の問題まで書けると差がつきます。
- 異種移植や再生医療などの新しい技術に触れる場合は、「期待」と「安全性・倫理の課題」を両方書くことが大切です。
前提知識
- 脳死
- 脳全体の機能が失われ、回復しない状態。人工呼吸器で心臓は動いているが、やがて心停止に至る。日本では、臓器提供を前提とする場合に限り、脳死を人の死として扱う。
- 改正臓器移植法(2010年施行)
- 本人の意思が不明な場合でも、家族の承諾があれば脳死後の臓器提供ができるようになった。15歳未満の子どもからの提供も可能になった。
- 運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証の裏などで、臓器提供の意思を表示できる。
根拠として使えるデータ
- 臓器移植を希望して待っている人は1万7,000人を超える(2026年3月末時点)が、実際に移植を受けられるのは年に3%台にとどまる。2024年度の移植数は662件で、初めて600件を超えた。(出典:nippon.com「臓器移植の待機者1万7000人超」)
- 人口100万人あたりの臓器提供数(2022年)は、アメリカ44.50人、韓国7.88人に対し、日本は0.88人と大きく少ない。(出典:琉球新報 社説「脳死判定1000件」)
- 臓器提供があったにもかかわらず、移植する病院の人手不足や集中治療室の空きがないことを理由に、延べ509人が移植を受けられなかった(厚生労働省が2024年9月に初めて公表)。(出典:時事通信「臓器移植断念、昨年509人」)
テーマ6 病院の経営危機と医療提供体制
例題
物価や人件費の上昇により、多くの病院が赤字に苦しんでいる。地域の医療を守るために、病院のあり方はどうあるべきか。あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
病院がお金の面で追い詰められている、という問題は、ここ1〜2年で急に大きく報道されるようになりました。
2025年3月、日本病院会など6つの病院団体の調査で、本業の医療で赤字になっている病院が約7割にのぼると公表されました。2026年7月には、全国の国立大学病院の2025年度の決算が計244億円の赤字だったと発表されています。物価や人件費が上がっても、医療の値段(診療報酬)は国が決めているため、病院はすぐに価格を上げられないことが原因です。
このテーマは、テーマ2(医療費)やテーマ4(地域医療)とつながっています。「近所の病院がなくなるかもしれない」という身近な問題として出題される可能性があります。
回答のポイント
よく出る問いは「地域の病院を守るにはどうすべきか」「医療機関の統合や役割分担をどう考えるか」です。
- 「国がお金を出して病院を守るべきだ」と書くだけでは、テーマ2の「医療費の増加」と矛盾してしまいます。限られたお金で医療を守るには、病院どうしの役割分担や統合が必要だという視点を入れると、論理が一貫します。
- 一方で、病院の統合によって「近くに病院がなくなる住民」が出る問題にも触れましょう。オンライン診療や交通手段の確保などで補う提案が書けると、反論にも答えられます。
- 「医療は社会全体で支える公共的なもの」という考え方が、理由の軸として使いやすいです。
前提知識
- 診療報酬
- 病院や診療所が行った医療行為に対して支払われる料金。国(厚生労働大臣)が全国一律に決め、原則2年に1度見直される(診療報酬改定)。病院が自由に値上げできないのはこのため。
- 地域医療構想
- 地域ごとに将来必要な病床(ベッド)の数や役割を見通し、病院の機能分担や連携を進める国の計画。急性期・回復期・慢性期などの役割を整理する。
根拠として使えるデータ
- 日本病院会など6つの病院団体の調査(2025年3月公表、1,816病院が回答)では、本業の医療で赤字(医業利益が赤字)の病院が69.0%、経常利益が赤字の病院が61.2%にのぼった。(出典:CareNet.com)
- 全国44の国立大学病院の2025年度決算は、合計244億円の赤字(速報値)。44病院のうち31病院が赤字だった。原因は、物価高による医療資材の値上がりと人件費の上昇。(出典:熊本日日新聞「国立大病院、244億円の赤字」)
- 2026年度の診療報酬改定では、物価や人件費の高騰をふまえ、診療報酬の本体部分が2.41%引き上げられた。(出典:GemMed)
テーマ7 インフォームド・コンセントと患者の自己決定
例題
患者が、医師のすすめる治療とは異なる選択をしようとしている。医療者はどのように対応すべきか。インフォームド・コンセントの考え方をふまえて、600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
インフォームド・コンセントは、医療系小論文で最も基本的なテーマの一つです。看護系の頻出テーマ本でも必ず取り上げられています。
最近、これ自体の大きなニュースがあったわけではありません。しかし、安楽死(テーマ1)、AI(テーマ3)、出生前検査(テーマ8)など、ほかのテーマを論じるときの土台となる考え方として、くり返し登場します。単独で出なくても、知らないと書けないテーマです。
回答のポイント
よく出る問いは「医師と患者の望ましい関係とは」「患者が医師と違う選択をしたときどうするか」「説明を受けても理解が難しい患者にどう対応するか」です。
- 昔の医療は「医師に任せておけばよい(パターナリズム)」という考え方が中心でした。そこから「患者が十分な説明を受けて自分で決める」へ変わってきた、という歴史の流れを一文入れると、答案に深みが出ます。
- ただし「患者が決めればそれでよい」で終わらせないことが大切です。高齢者や子ども、病気で判断が難しい人の場合、どう意思を支えるかまで書くと、医療者を目指す人らしい答案になります。
- 「説明した」ではなく「患者が理解し、納得した」ことが大事だという視点が、評価されるポイントです。
前提知識
- インフォームド・コンセント
- 医療者が病状や治療の方法、効果、危険性、ほかの選択肢などを十分に説明し、患者がそれを理解・納得したうえで治療に同意すること。「説明と同意」と訳される。
- パターナリズム
- 「患者のためになる」という理由で、本人の意思を確かめずに医師が治療方針を決めること。父親が子どもに対してふるまう態度にたとえた言葉。
- セカンドオピニオン
- 診断や治療方針について、主治医とは別の医師に意見を求めること。患者が納得して治療を選ぶための手段の一つ。
- 意思決定が難しい人を支える考え方を「意思決定支援」という。テーマ1のACPもその一つ。
根拠として使えるデータ
- 医療法では、医師や看護師などの医療の担い手は、医療を提供するにあたり適切な説明を行い、医療を受ける人の理解を得るよう努めなければならないと定めている(1997年の改正で追加)。(出典:医療法 第1条の4第2項)
- ACP(人生会議)を「よく知っている」一般の人は5.9%にとどまる一方、自分の希望を書面にしておく「事前指示書」の作成に賛成する人は69.8%いる。「自分で決めたい」と考える人は多いのに、そのための話し合いが進んでいないことがわかる。(出典:厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアに関する意識調査」令和4年度)
テーマ8 遺伝子検査・ゲノム医療・出生前検査
例題
妊婦の血液から胎児の染色体を調べる出生前検査の対象が広がりつつある。このような検査が広がることについて、あなたの考えを800字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
遺伝子に関わる医療は、技術の進歩とともに出題が増えているテーマです。頻出テーマ本でも「遺伝子検査」として取り上げられています。
2026年1月には、東京慈恵会医科大学など全国11の医療機関が、妊婦の血液から胎児のすべての染色体を調べる新型出生前診断(NIPT)の臨床研究を、2月にも始めると報じられました。これまでは3種類の染色体の異常だけを調べていたため、大きな広がりです。一方で、認証を受けていない施設で検査が広く行われ、十分な説明がないまま妊婦が混乱しているという問題も指摘されています。「知ることができる」ことが増えるほど、「知ったあとどうするか」という倫理的な問いが重くなります。
回答のポイント
よく出る問いは「出生前検査をどう考えるか」「遺伝情報を知ることの利点と危険」「遺伝情報による差別をどう防ぐか」です。
- 出生前検査は、命の選別につながるおそれがあるデリケートなテーマです。検査を受ける人や、障害のある人を責めるような書き方は避けましょう。
- 立場をとるときは、「検査そのものの是非」よりも「検査を受けるかどうかを、十分な情報と支えのもとで本人が選べる体制が必要だ」という方向で書くと、論点がはっきりします。
- 遺伝カウンセリングの充実、障害のある人とその家族を支える社会の仕組み、という2つの視点を入れると、答案に厚みが出ます。
前提知識
- ゲノム医療
- 一人ひとりの遺伝情報(ゲノム)を調べ、その人に合った病気の予防・診断・治療を行う医療。がんの治療薬選びなどで活用が進んでいる。
- 新型出生前診断(NIPT)
- 妊婦の血液に含まれる胎児のDNAを調べ、染色体の異常の可能性を調べる検査。陽性の場合は、羊水検査などで確定診断を行う必要がある。
- 遺伝カウンセリング
- 遺伝に関する悩みや不安を持つ人に、専門家が正確な情報を伝え、本人が自分で判断できるよう支える相談。
- 2023年に「ゲノム医療推進法」が成立し、遺伝情報による不当な差別を防ぐことなどが国の責任として定められた。
- 遺伝情報は本人だけでなく、親・きょうだい・子どもにも関わる情報であることが、ほかの医療情報との大きな違い。
根拠として使えるデータ
- 現在の新型出生前診断(NIPT)は、ダウン症などの原因となる3種類の染色体の異常だけを調べている。2026年2月にも、東京慈恵会医科大学など全国11の医療機関が、すべての染色体を調べる臨床研究を始めると報じられた。対象は妊婦約2,000人で、2030年3月末まで行われる予定。(出典:秋田魁新報「新出生前診断、全染色体で」)
- 3種類以外の染色体を調べる検査は、認証を受けていない施設で広く行われているが、精度が十分に検証されておらず、説明や相談の体制が不十分なまま検査を受けた妊婦が混乱していると指摘されている。(出典:同上)
テーマ9 孤独・孤立と健康
例題
孤独は健康に悪い影響を与えると言われている。医療者は患者の孤独にどのように関わるべきか。あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
孤独は、一見すると医療と関係ないようですが、近年は「健康を左右する問題」として医療の分野でも注目されています。
2025年6月、WHO(世界保健機関)は、世界で6人に1人が孤独の影響を受けており、孤独が年間87万人以上の死亡と関連していると推計する報告書を発表しました。日本でも2024年4月に孤独・孤立対策推進法が施行されています。医学部の小論文では、浜松医科大学が「人間関係をコスパで選ぶこと」を問うなど、人とのつながりに関する出題も見られます。医療と人間関係が交わるテーマとして、出題が予想されます。
回答のポイント
よく出る問いは「孤独は個人の問題か、社会の問題か」「医療者は患者の孤独にどう関われるか」「高齢者の孤立をどう防ぐか」です。
- 「孤独は本人の気持ちの問題」ではなく、健康に影響する社会の問題として捉えることが、この話題の出発点です。
- 一人でいることが好きな人もいます。「一人でいる(孤立)」と「さびしいと感じる(孤独)」を区別し、本人が望まない孤独を対象にすると、反論に強い答案になります。
- 医療者ができることとして、「診察や看護の中で患者の生活や人間関係にも目を向ける」「地域の支援につなぐ」などを具体的に書きましょう。
前提知識
- 孤独と孤立
- 「孤独」はさびしいと感じる主観的な気持ち、「孤立」は人とのつながりが少ない客観的な状態を指す。両者は一致しないこともある。
- 社会的処方
- 医師などが、薬の代わりに地域の活動や人とのつながり(趣味のサークル、ボランティアなど)を紹介し、患者の健康を支える取り組み。イギリスで広がり、日本でも試みが始まっている。
- 日本では2024年4月に「孤独・孤立対策推進法」が施行され、国や自治体が孤独・孤立対策に取り組むことが定められた。
根拠として使えるデータ
- WHO(世界保健機関)は2025年6月、世界で6人に1人が孤独の影響を受けており、孤独が年間87万1,000人以上の死亡に関連していると発表した。(出典:WHO, "Social connection linked to improved health and reduced risk of early death"(2025年6月30日))
- 日本で孤独感が「ある」と答えた人(「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」の合計)は37.7%。年代別では20〜50歳代で40%を超え、30歳代が43.0%と最も高い。(出典:内閣府「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」令和7年 調査結果のポイント)
テーマ10 美容医療と医療の倫理
例題
美容医療を受ける人が増える一方で、トラブルも増えている。医療が利益を追い求めることについて、あなたの考えを600字以内で述べなさい。
出る可能性がある理由
美容医療は、これまで小論文の主要テーマではありませんでした。しかし、ここ数年で急に社会問題として注目されています。
SNSの広告をきっかけに美容医療を受け、やけどや神経のまひなどの被害を受けたり、高額な契約を迫られたりする相談が増えました。国の検討会は、医療機関に安全管理の体制を報告させる仕組みや、違法な広告の取り締まり強化などの対策をまとめています。また、研修を終えた若い医師がすぐに美容医療の道へ進む「直美(ちょくび)」も話題になり、テーマ4の「診療科偏在」とつながる問題として議論されています。
回答のポイント
よく出る問いは「美容医療の広がりをどう考えるか」「医療と商売(利益)の関係」「若い医師の進路選択と医療全体のバランス」です。
- 美容医療そのものを否定する必要はありません。見た目の悩みを解消して生活の質を上げる面もあります。問題は「安全性」と「十分な説明なしに高額な契約をさせる商業主義」だと整理しましょう。
- 「直美」を論じる場合は、「医師が進路を選ぶ自由」と「保険診療や救急を担う医師が足りなくなる」という、テーマ4と同じ構図で書けます。若手医師を批判するだけでなく、なぜ保険診療の現場から医師が離れるのか(過重労働など)まで考えると、深い答案になります。
- 医療は、利益を追うだけの「サービス業」とは違う、という軸で書くと、医療倫理の視点を示せます。
前提知識
- 自由診療
- 公的医療保険が使えず、費用を全額患者が払う診療。美容医療のほとんどは自由診療で、価格は医療機関が自由に決められる。
- 直美(ちょくび)
- 医師が2年間の初期臨床研修を終えたあと、ほかの診療科で経験を積まずに、すぐに美容医療の分野に進むこと。医療の基本的な経験が不足したまま施術をすることや、保険診療を担う医師が減ることが懸念されている。
- 医療広告には法律による規制があり、治療前後の写真(ビフォーアフター)を詳しい説明なしに載せることなどは原則として禁じられている。
根拠として使えるデータ
- 全国の消費生活センターなどに寄せられた美容医療の相談は、2023年度6,281件、2024年度1万744件、2025年度7,944件。2024年度に大きく増えた。(出典:国民生活センター「美容医療」)
- 国の検討会は、施術の失敗や合併症、医師でない人による治療方針の決定、オンラインでの診察なしの処方、高額な契約の強要、SNS広告をきっかけとしたトラブルなどを課題として挙げた。そのうえで、医療機関に安全管理体制などを毎年報告させる仕組みや、違法な広告の取り締まり強化を対策としてまとめた。(出典:厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書(案)の概要)
テーマどうしのつながりを意識しよう
10のテーマを並べてみると、多くのテーマが互いにつながっていることに気づきます。
- 医療費と経営:テーマ2(医療費)、テーマ6(病院の経営)、テーマ4(地域医療)
- 患者の意思:テーマ7(インフォームド・コンセント)、テーマ1(安楽死)、テーマ8(出生前検査)
- 医療者の働き方:テーマ4(医師の偏在)、テーマ3(AI)、テーマ10(直美)
本番では、知らないテーマが出ることもあります。そんなときは、ここで学んだ「自己決定」「公平さと制度の持続性」「医療者の責任」といった考え方を当てはめてみてください。テーマが違っても、論じるための軸は共通していることが多いのです。
- ポイント
- 知識は「覚えた数」より「使える軸」が大事。患者の自己決定、公平さと持続性、医療者の責任という3つの軸を持っておけば、初めて見るテーマにも対応できる。
ロジクイズで小論文の土台となる論理力を鍛えよう
テーマの知識がそろっても、それを「意見と根拠」として正しくつなげられなければ、小論文の点数にはつながりません。
そこでおすすめしたいのが、論理的思考力を鍛えるためのクイズアプリ 「ロジクイズ」 です。
ロジクイズでは、短い問題を解きながら「この主張の根拠は何か」「この条件から何が言えて、何が言えないか」を考える練習ができます。医療系の小論文でよく出る「賛成と反対の両方に理由がある問題」を考えるときにも、この力が役立ちます。
- 1問ずつ短く解けるので、テーマの勉強の合間にも続けられる
- 根拠と主張のつながりを見抜く練習が、答案の論理チェックに役立つ
- 正解・不正解がすぐわかり、自分の考え方のクセに気づける
テーマの知識を集めたら、それを論理でつなぐ練習を。まずは1問、気軽に解いてみてください。
